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採集に出かける前に
採集に出かける前に、水槽のセッティングをしておく事は常識です。
しかしまったくの素人さんは、この常識を無視する場合があります。
そのエピソードをちょっとご紹介。
彼は旧友ですが、海水魚には知識も感心もありません。
私が採集をしていると話すと、息子を連れて行ってやりたいと言い出しました。
信用できるヤツですし、磯遊びくらいにしか考えてないようなので、その年の夏に連れて行くことにしました。
事前に採集に関する本を貸し、マナーやルール、危険生物、採集のコツなどを簡単にレクチャーして出発。

磯に到着し、ちょっとだけ海の中を案内し、マメチョウやクマノミの居場所を教えて、後は個別行動。
手取足取り教えてあげるほど、私は親切ではありません。

さて帰り際、友人親子のバケツを見るとソラスズメやカゴカキダイが泳いでいます。
彼の息子もそれなりに満足の様子。
よかったよかったで帰路につきました。

数日後偶然彼に会ったので、その後の採集魚の様子を尋ねてみると、全滅したとの事。
詳しく話を聞いてみると、海水こそ天然海水を使っているものの、その他の装備は縁日の金魚同様。
しまった!採集については教えたものの、飼育についてはまったく教えてませんでした。


彼に限らず小さな子供を連れての磯遊びではこんなものでしょう。
さして悪気もなく、子供にせがまれれば飼育の用意が出来てなくても生き物を連れて帰るのはありそうな事です。

磯遊びはそれで良くても(良くないけど)、採集家になろうと言うものはそれではいけません。
事前にちゃんと飼える水槽をセットしておきましょう。

ではどう言う水槽をセットするか、それは飼育書や他のサイトにゆずりましょう。

「えーーーっ、無責任な!」と言う声が聞こえるようですが、甘えてはいけません。
そう言う情報って、今は簡単に入手できます。

「面倒くさいだけじゃないか!」と言う声が聞こえるようですが、実はその通りです・・・。

 

餌付け
このページでは採集した魚の餌付けをご紹介します。

スズメダイ、ベラ、ニザダイの仲間は、改めて餌付ける必要はまったくありません。
落ち着きさえすれば、すぐに人工飼料をパクついてくれます。
しかし採集の花形であるチョウチョウウオはちょっと厄介です。

チョウチョウウオの食性は主に3つに分類する事ができます。
雑食性、ポリプ食性、プランクトン食性です。
プランクトン食性のチョウチョウウオは本州沿岸では採集できないと言ってもいいので、この際割愛します。

一般に雑食性のチョウチョウウオは餌付けやすく、ポリプ食性は餌付けにくいと言われています。
しかし根気があれば、それほど難しい事ではありません。

アサリの練り餌
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冷凍アサリを解凍し、紐を取り除きす
り鉢で磨り潰す。
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磨り潰したアサリに人工飼料を加え、
練り餌を作ります。人工飼料は磨り潰
さず、粒を残したまま混ぜ込みます
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アサリの殻に練り餌を塗り付け、再び
凍らせます。

アサリでの餌付け

1.スーパーで買ってきたアサリを一旦冷凍庫で凍らせます。
  貝についた雑菌を殺すのが目的ですが、アサリ自体も凍死するので、
  後の処理がしやすくなります。

2.凍ったアサリを解凍し、貝を開いてそのまま与えます。
  まずは魚の体力が落ちないようにする事が肝心です。
  そのままのアサリには大抵の魚が、簡単に餌付いてくれるはずです。

3.アサリに餌付いたら、練り餌に切り替えます。
  アサリの期間が長いと、人工飼料への切り替えが難しくなります。

4.右の方法で練り餌を作り、段階的に人工飼料の比率を増やしていきます。
  最終的には人工飼料だけの練り餌を作り与えます。
  人工飼料だけの練り餌に餌付いたら、容器からの飼料を直接与えても食べるようになります。

  アサリの練り餌の長所は確実性が高い事です。
  大抵のチョウチョウウオは練り餌に餌付いてくれます。
  根気強く粘れば、ミスジチョウチョウウオのような頑固者でも餌付いてくれます。

  また栄養価の面でも優れています。

  短所は何と言っても練り餌を作るのが面倒な事です。
  段階的に比率の違う練り餌をいくつか用意しなければなりません。
  後は、臭い事かな。

 

 

 

 

 

タラコでの餌付け

餌付け用タラコ
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無着色のタラコを一昼夜水に浸して
塩出しをします。
途中で1度、水を仕替えましょう。
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塩出ししたタラコの水をきり、
皮を裂いて卵を取り出します。
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小分けをして凍らせます。白色トレー
などに小別けして盛り付けます。
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解凍してから与えると、雪を降らせた
ようにタラコが水槽の中を散ります。
大抵の魚は、争って食べてくれます。

1.餌付け用タラコを作ります。

2.魚が餌付け用のタラコに充分慣れたら、1日餌を与えず、空腹の状態を作ります。

3.翌日、粒状の餌(なるべくタラコ大のもの)を与えると、違和感なく食べてくれます。

  タラコでの餌付けはアサリに比べ、作るのが簡単、臭くない、貝殻の回収をしな
  くてすむ、アサリほど水を汚さない、などメリットが多いのでお勧めです。
  まずタラコで餌付けてみて、どうしても餌付けない頑固な魚にはアサリを使うの
  が良いと思います。

 

餌付けの最大のコツは、無理しない事です。
餌付きの悪い魚は、途中まで上手く行っていても、最後の段階になって足踏み状態になります。
そんな時は1度前のステップまで戻って、やり直しましょう。
魚に無理をさせると、体力が落ちて結局死なせてしまう事になります。

特にアサリの練り餌の場合はちゃんと食べているかどうかを確認しましょう。
突いているようでもアサリだけ上手に穿り出して食べている場合があります。
こう言う魚は人工飼料は吐き出しているので、アサリの割合が低くなると痩せてしまう事があります。

魚種によって、餌付きの良いタイプと悪いタイプがあります。
先に書いたように雑食性のチョウチョウウオは餌付きやすく、ポリプ食性のチョウチョウウオは餌付きにくい傾向にあります。
しかしこれも個体差があって、一概に言い切ることは出来ません。
根気よく餌付ける事が大切です。

また魚を落ち着かせるのも、大切なコツの一つです。
先住者の魚がいると、落ち着き、餌付きも早いですが、広い水槽に1匹だけでしかも始終覗かれていると、魚も落ち着きません。
そんな時、水槽に新聞紙を巻くなりして目隠しをすると、簡単に餌付く事があります。
ツノダシのように、大した偏食家でもないのに餌付きが悪いのは、単に臆病から来るもので、目隠し作戦は有効な手段です。

また水質が悪化していると餌付きにくい事があります。
ことにpHが下がっている場合に餌付かない事が良く見られるようです。
詳しいpH値が分からなくても、餌付きが悪いと感じた時は、水替えをしてみましょう。

白点病について
病気で最も頻繁に発生して治療も厄介なのは白点病です。

白点病は白点虫によって引き起こされます。
白点虫は魚の表皮や鰓に寄生し、ある程度大きくなると魚から離れ水中や水槽の底に落ち分裂して増えていきます。
そしてまた浮遊し魚に寄生する事を繰り返します。

寄生している時は肉眼で確認できますが、魚から離れている時(シスト期)は見えません。
シスト期の白点虫は、水槽内に普通に存在すると考えられていますが、魚が健康な状態では寄生する事ができず病気の発生は見られません。
しかし一度水槽内で何かのバランスが崩れると、大発生する事もあります。

肝心なのは白点虫が表に出ないように押さえ込む事、つまり予防です。

予防方法

白点病の予防にはいくつかありますが、もっとも重要なのは魚がストレスなく健康な状態でいる事です。
その為には良好な水質を維持する事です。
知らない間に飼育水が蒸発し塩分濃度の比重が上がっていたり、pHが下がっていたりすると病気が発生する事が多いようです。

また過密飼育も魚にかなりのストレスを与えます。
飼いきれないほどの魚を採集する事は、水槽崩壊にも繋がりますから、その意味でも止めた方が賢明なのです。

飼育器具である程度押さえ込む事もできます。殺菌灯です。
殺菌灯は紫外線を出す筒の中に飼育水を通し白点虫を殺すもので、病気予防の他にコケの発生も若干制御できるようです。
白点病予防にはかなりの効果がありますが、万能ではありません。

もう一つ注意する事は濾過槽の掃除です。
濾過槽や底砂は白点虫の温床になっている事が多く、掃除をした時に眠っていた白点虫を水槽内に撒き散らしてしまう事で発生する事があります。
濾過槽や底砂の掃除には充分気をつけましょう。

治療方法

治療方法にはいくつかありますが、なんと言っても早期発見。日常管理が肝心です。
ヒレに白い粒々が少し着いている位ならすぐ完治できますが、塩をまぶしたようになってはどんな治療法も効果はありません。

早期発見なら塩分の比重を0.002程度下げる事で、大抵は治す事ができます。
水槽に足し水をする場合、塩素中和剤を使用する事は無論ですが、pH上昇剤も足し水の中に入れてpHを上げるようにします。
比重を下げてから4〜5日程度で治癒します。
ただしあまり比重を下げすぎない事。1.020以下にする事は避けましょう。
また治癒後は徐々に比重を戻す事も忘れないようにしましょう。

この方法は浸透圧によって白点虫を殺すのですが、比重をかなり下げないと効果がないとする説もあります。
しかしあまり比重を下げてしまうと魚にストレスを加えてしまい、かえって弱らせてしまうと思われます。
極端な話が淡水浴です。
淡水浴をさせると魚についた白点虫を殺す事が出来るかもしれませんが、魚も弱らせてしまうので、水槽に戻してからかえって悪化するケース方が多いように思われます。

白点病は人間の風邪と同じなので、健康体であればあまり表には出てきません。
そう言う意味で魚にストレスをかけないのが一番の治療法かもしれません。

その他、進行してしまった白点病には硫酸銅が有効ですが、入手や日常管理が面倒な上、硫酸銅の濃度の調整が難しく、返って硫酸銅を使用した為に死んでしまうこともあります。

またホルマリンやマラカイトグリーンも有効だと聞いた事がありますが、魚にストレスを与えてしまうような気がします。
そう言った薬物での治療は私自身がヘタクソなので、あえて書かない事にします。